日帰り手術とは
当院では、各種手術(白内障、緑内障、網膜硝子体疾患)をいずれも日帰りで行います。
白内障手術
白内障手術について
当院の白内障手術は、日帰り手術になります。手術は、日常生活に不便を感じるほど症状が進行した場合に検討されます。手術療法では、超音波による水晶体乳化吸引術で濁った水晶体を取り除き、人工のレンズ(眼内レンズ)を挿入します。
日帰り手術の検討が可能とされる方
日帰り手術を行うにあたっては、次のような方が望ましいとされています。
- 内科的に大きな問題が無く、手術を受けても体に影響の無い方
- 通院が可能な方(術後の経過を診察するために、定期的な通院が必要です)
- 目に他の重い合併症(角膜混濁・重度の緑内障や糖尿病網膜症など)が無い方
- 術中・術後の諸注意がきちんと守れる方
手術内容について
手術では、最初に白く混濁した水晶体を超音波白内障乳化吸引術(専用の器具から超音波を出して水晶体を砕き、シャーベット状にして吸引する)という方法で取り除きます。この時に、水晶体を包んでいる袋(嚢)の後ろの部分を残しておきます。この水晶体後嚢に眼内レンズを挿入して終了となります。基本的に局所麻酔下に行い、手術時間は20~30分くらいです(※個人差があります)。
白内障手術当日の手順
- 1.点眼麻酔をします。少し沁みる程度で、痛みはありません
- 2.黒目(角膜)と白目(強膜)の境目あたりに幅2~3ミリほどの小さな切開を入れます。その後およそ5ミクロンの水晶体の皮を円形にくり抜きます
- 3.超音波装置を使い、濁った水晶体の中身を超音波で細かく砕きながら、同時に吸い取ります
- 4.中身の取り除かれた水晶体嚢の中に、小さく折り畳んだ眼内レンズを挿入します
- 5.切開創を閉鎖させると、水晶体嚢の中に透明な眼内レンズが収まります
手術後の注意点
手術後は、目が充血する、ゴロゴロする、涙が出る、目がかすむといった症状が表れますが、数日から1~2週間ほどで治まります。
※以下のことに注意してください
- 入浴や洗顔は1週間ぐらい避ける
- 目を押したり、こすったりしない
- 転んだり、ぶつけないよう注意する
眼内レンズについて
なお、手術の際に新たに挿入する眼内レンズにつきましては、手術を行う前にあらかじめ決めておく必要があります。レンズには主に3つのタイプがあり、保険適応の単焦点眼内レンズと2重焦点眼内レンズで、もうひとつは保険適用外で自費となる5重焦点眼内レンズです。それぞれの特徴は以下の通り。
単焦点眼内レンズ(保険適応)
単焦点眼内レンズとは、ピントが1点にだけ合うレンズのことです。
通常、人間の目は近くにも遠くにもピントを合わせることができます。しかし、この単焦点眼内レンズは焦点が1点のみなので、近くか中間距離か遠くのいずれかに合わせる必要があります。そのため、どの距離にピントを合わせるかについては事前に医師と話し合いの上、手術を行うまでに決めておく必要があります。
ピントが1点であることから生じる不便については、遠方を見るための眼鏡や老眼鏡で補うことになりますが、ピントがあった距離の見え方は3つのレンズの中で一番クリアーになると思います。
2重焦点眼内レンズ(保険適応)
一方、2重焦点眼内レンズでは、遠く~中間距離まで眼鏡を使用せず(もしくは1つの眼鏡をかけたままで)にピントを合わせることができるようになりますので、単焦点眼内レンズに比べて、眼鏡のかけ外しの頻度を少なくすることができるようになり、便利に生活を送ることができます。残念ながら、読書などの近方を見るときには眼鏡をかける必要があります。また、中間距離~近方にピントが合う様な度数のレンズを選んで、遠くを見るときに眼鏡を使用する方法もあります。単焦点眼内レンズと2重焦点眼内レンズはレンズ代も手術費用も医療費はすべて保険適応なので、経済的負担は少なくて済みます。
5重焦点眼内レンズ(自費)
5重焦点眼内レンズは遠中近全て用のレンズになります。そのため、単焦点眼内レンズや2重焦点眼内レンズと違い、近く、中間距離と遠くの3ヵ所にピントを合わせることができ、日常の多くの場面で眼鏡の使用が不要(もしくは1つの眼鏡をかけたままで)になります。しかし、ピントがあったおのおのの距離の見え方は単焦点レンズが一番明るく、くっきりピントが合います。多焦点眼内レンズで見たい距離にしっかりとピントを合わせて見たい場合には、眼鏡の使用が必要な場合があります。
5重焦点眼内レンズを使用すると日常の多くの場面で眼鏡の使用が不要になりますが、健康保険が適用されないので、医療費はすべて「自費」になり、単焦点、2重焦点眼内レンズに比べ、経済的負担は大きくなります。
また、以前の2重焦点眼内レンズを含む多焦点眼内レンズでは、薄暗い場所や夜間にライト等を見ると、光の周辺に輪が掛かって見えたり、眩しさを感じたりすることがあるため【ハロー・グレア現象:診療メニュー”多焦点眼内レンズ“の中の「眼内レンズの違いによる見え方(ピントが合う場所)の違い」の項目の図の下側に説明図があります】、夜間の車の運転などには不向きとされていましたが、当院で採用しているLENTIS(保険適応2重焦点眼内レンズ)、INTENSITY(自費診療5重焦点眼内レンズ)を移植した患者さんのアンケート結果では、日常生活のほとんどの場面でハロー、グレア現象を感じることが無いことが報告されています。
網膜硝子体の手術
網膜硝子体手術は、硝子体内部に起こった疾患を治療するのが目的です。眼内の出血や濁りなどを硝子体と一緒に除去するほか、網膜にできた増殖膜や網膜の穴(裂孔)などを治療します。
主に加齢黄斑変性症をはじめ、糖尿病網膜症(眼底出血)、網膜剥離、黄斑上膜、網膜静脈閉塞症(黄斑浮腫)、硝子体混濁(ぶどう膜炎)などの症状に対して、同手術を行います。
手術では硝子体を切除する必要があります。そのため、白目の部分に4ヵ所ほどの小さな穴を開け、そこから細い器具を眼内に挿入して眼の中の出血や濁りを硝子体と一緒に取り除き、網膜に生じた増殖膜や網膜裂孔を治して、網膜の機能を回復させます。
手術の流れについて
- 1.眼球の後方に局所麻酔を行います。痛みに敏感な方は、術中に適宜麻酔を追加します。
- 2.白目の部分に1ミリ以下の穴を4ヵ所ほど開け(白目に開けた穴から細い器具を通したり、硝子体を切除するカッターなどを入れるため)、眼内の出血や濁りのある硝子体を取り除いた後、網膜にできた増殖膜や網膜裂孔を治療します。
- 3. 取り除いた硝子体に代わるものとして、水・空気・ガス・シリコーンオイルのいずれかを眼内に置換します。手術時間は疾患により異なりますが、1~2時間程度。病状によっては白内障手術を同時に行う場合もあります。
手術の際の注意点
網膜硝子体手術は重症のケースだと、2時間ほどかかることがあります。そのような場合、再出血をはじめ、網膜剥離や緑内障などの合併症を引き起こす可能性もありますが、適切に加療することで対処に努めます。
緑内障手術
レーザー治療について
緑内障の治療にあたっては、まず眼圧を下げるための薬物療法として、点眼薬による治療を行います。点眼薬のみでは効果が期待できない、あるいは緑内障のタイプによって、点眼薬以外の治療法が有効であると医師が判断した場合に「レーザー治療」もしくは「手術療法」が行われます。当院では、緑内障の日帰り手術として、レーザー治療を行っています。
2種類あるレーザー治療
レーザー治療は主に二つの方法があり、共に房水の流れをよくするために行います。ひとつが、目の虹彩という部分にレーザーを照射(照射時間は20分ほど)して切開し、房水を排出しやすくするレーザー虹彩切開術、もうひとつが詰まった状態になっている線維柱帯にレーザーを照射(照射時間は5分ほど)するレーザー線維柱帯形成術です。
閉塞隅角(房水の出口が狭い)で緑内障発作を招きやすい目には、予防的にレーザーによる虹彩切開術を施します。また開放隅角(房水の出口が広い)なのにもかかわらず、薬で眼圧が十分に下がらない、視野異常の進行が止まらないという場合は、線維柱帯(隅角にあるスポンジ状をした房水の流出口)にレーザーをあてることで房水の排出を促します。
レーザー虹彩切開術
レーザー光線で虹彩(角膜と水晶体の間にある薄い膜)に小さな穴を開け、房水が流れるバイパスを作ります。純粋に閉塞隅角の問題による眼圧上昇であれば、圧は下がります。しかし時間が経過し、周辺に癒着が生じている場合は、このレーザー治療だけでは眼圧を下げる効果が十分でなく、点眼などを追加します。しかし、それでも目標とする眼圧まで下がらないようなら、手術(線維柱帯切除術)が必要になります。
選択的レーザー線維柱帯形成術
房水が流れる通路(シュレム管)の手前の線維柱帯にレーザーを照射し、房水の眼外への排出をスムーズにすることによって眼圧を下げるレーザー手術です。外来で点眼麻酔のみで行え、痛みはほとんど伴いません。しかし、この治療は、すべての人に効果的ではなく、大幅な眼圧下降も期待できません。また、術後数ヵ月以内に効果が失われてしまうこともあります。
緑内障手術について
点眼治療、レーザー治療でも改善が難しいような進行性の緑内障には、手術療法を行います。これは、手術で人工的に新たな房水の出口を作る治療になります。手術の方法としては、「線維柱帯切除術」、「線維柱帯切開術」の2通りがあります。
線維柱帯切開術(トラベクロトミー)
目詰まりを起こしている線維柱帯を切開し、房水の排水効率を良くする手術です。
術後は一時的に眼内出血が見られ、いったん視力が低下しますが、ほとんどは数日で改善します。また、緑内障に対する別の手術である線維柱帯切除術と比べ、長期的な合併症が少なく、安全と言えます。しかし、眼圧の下がり具合は線維柱帯切除術に比べると劣ります。
線維柱帯切除術(トラベクレクトミー)
線維柱帯を一部分切除して結膜の下にバイパスを作成し、そこから房水が流れるようにして眼圧の低下をはかる手術です。作ったバイパスを塞がりにくくするため、わざと傷の治りを遅らせる薬(マイトマイシン)を術中に切開創に塗布します。こうすることで治療効果の維持が期待できます。しかし、眼圧が下がり過ぎると視野狭窄が進んでしまうこともあるため、切開創はきつめに縫合します。また、術後は定期的に眼圧を測定し、眼圧が上がっているようであれば、切開創を縫合した糸をレーザーによって切除し、房水の流れを調節することで眼圧を上手にコントロールします。